Author:hohohiho 都内の広告制作会社に勤める31歳。WEBやITの波に周回遅れ気味。現在パドリングで猛追中。ご意見などはhohohihoアットgmail.comまで。
多分さ、わたしにとってアレはわたしなんだよ。ずっとずっと前のわたしなんだよね。娘はちょっとしたことで、小さな崩れでばばばと吐くことがよくあった。わたしは駅で、駅ビルで、店舗の中で、這いつくばって床にポケットティッシュをばらまいて、素手で汚れをかき集めてビニールに入れた。そんなことを何度もやったのを、息子も目にして育ってきた。息子にとっては、すぐにさささと対応して、人にばたばたと頭をさげ、そしてにっこりと「さあもうだいじょうぶよ」という母だったんだけど。そうなの。そういうときはいつもそうだったの。わたしがさささと対応しなきゃ、このアクシデントから娘の気持ちも息子の気持ちも救えないと思ってたから。でもさ、さっきのあのママも、わたしなんだ。知らない人がばさっとポケットティッシュを握らせてくれたりもした。いつの間にか作った小さなおしぼりを押しつけて消えた人もいた。振り返るともういないタイミングで、助けてくれた人たちがいた。そういう人たちがわたしをさささと対応するかーちゃんにしてくれていったんだ。そうなんだ、アレはずっとずっと前のわたしなんだ。わたしは駆け寄る息子にああいうきつい声を出したこともあったんだろうと思った。くくくくーっと胸に喉にくるこの何か。ああそうか。わたし、がんばってたのか。がんばってたんだなあ。な〜んて感傷をしっかり息子につき合わせてから。「ねえ、あのさ。ああいうときにさ、ゲロでもなんでも他のことでもいいからさ、ああいうどう考えてもアクシデントって人を目撃したらさ、逃げる人じゃなくって動ける人になって欲しいとわたしは思うんだ。ティッシュ、ありがとうね」。助手席の息子、黙って二三度静かにうなづく。
読了:広告・マーケ・自己啓発本